ワインを飲むとき、なんとなくグラスを回して飲んでいませんか?
実は、プロが行う**「テイスティング」には、明確な手順と理由があります。特に、銘柄を隠してワインの品種や産地を当てる「ブラインドテイスティング」**の世界では、一つ一つの動作が正解への大きなヒントになります。
今回は、基本の「見る・香る・味わう」の3ステップに加え、ソムリエ試験やワインエキスパート試験でも重要視される**「品種を決めつけない思考法」や「香りの扱い方」**について深く解説します。
これが実践できるようになると、ワイン体験が単なる「飲み物」から「知的な探求」へと変わります。
テイスティングの心構え:当てっこゲームではない
まず最初にお伝えしたい重要なポイントがあります。 テイスティング、特にブラインドテイスティングにおいて最も大切なのは、**「品種当てゲーム(クイズ)ではない」**ということです。
「これはカベルネだ!」「いや、メルロだ!」といきなり答えを探すのではなく、目の前のワインが持つ**「個性」や「特性」を正しく感じ取り、言語化すること**が本質です。
そのために必要なのが、以下の3ステップを冷静に積み重ね、最後に答えを導き出す(推理する)プロセスです。
ステップ1:外観を見る(Appearance)
まずは視覚情報からヒントを集めます。
先入観を捨てる
「色が濃いから濃い味のワインだ」と決めつけるのは危険です。例えば、ネッビオーロ(イタリアの品種)のように、色が薄くてもタンニン(渋み)が非常に強い品種もあります。まずは「事実」だけを観察しましょう。
- 色調: 紫がかった若々しい赤か、熟成を感じるオレンジか。
- 濃淡: グラスの底が見えるか、見えないか。
- 粘性: グラスの壁を伝う涙はゆっくりか(アルコールや糖分が高い可能性)、サラサラか。
ステップ2:香りをとる(Nose)
テイスティングにおいて、最も重要なのがこの「香り」のステップです。 実は、人間の味覚(甘味・酸味など)よりも、嗅覚の方が得られる情報量は圧倒的に多いのです。
重要:口にする前に徹底的に香る
「早く飲みたい」と思っても、まだ口にしてはいけません。 一度ワインを口に含んでしまうと、強い酸味や渋み、アルコールの刺激に脳が引っ張られてしまい、繊細な香りのヒントを拾えなくなってしまいます。まずは鼻だけで勝負します。
1. 静止状態で香る
グラスを回さずに香りを取ります。ここで感じるのは、ブドウ本来のアロマや、揮発しやすい繊細な香りです。
2. スワリングの注意点:回しすぎない!
「ワイン=グラスをぐるぐる回す(スワリング)」というイメージがあるかもしれませんが、無闇なスワリングは禁物です。
- リスク: 激しく回しすぎると、繊細なアロマや微細な香りのヒントが飛んでしまい、アルコール臭ばかりが立ってしまうことがあります。
- 正しいテクニック: 無理に回転させなくても、**グラスを大きく傾けてゆっくりと回し、グラスの内壁全体にワインの膜を広げる(リンスする)**だけで十分です。
こうすることで表面積が増え、繊細な香りを壊すことなく、穏やかにアロマを立ち上がらせることができます。
ステップ3:味わう(Palate)
香りで十分な情報を得たら、いよいよ口に含みます。
アフターフレーバー(余韻)を確認する
甘味、酸味、タンニンの量を確認するのはもちろんですが、プロが重要視するのが**「アフターフレーバー(含み香・余韻)」**です。
飲み込んだ(あるいは吐き出した)後に、鼻から抜ける香りや、口に残る風味はどうでしょうか?
- スパイシーさが残る?
- フルーティーな香りが長く続く?
- スッと消える?
この「余韻の長さ」や「最後に残る香り」は、ワインの品質や品種特定(例:ピノ・ノワールなどは余韻が特徴的)の大きな手がかりになります。
最終ステップ:結論を導き出す
ここまできて初めて、集めたピース(情報)を組み立てます。
- 整理する:
- 「色は濃い、香りは黒系果実とスパイス、渋みは強い、酸は穏やか」
- 推論する:
- 「暖かい地域のカベルネ・ソーヴィニヨンかシラーズの可能性が高い」
- 「しかし、スパイシーさが際立っているからシラーズか?」
最初から「シラーズだ」と決めつけてかかると、その品種にない要素(例えば強い酸味など)を見落としてしまいます。**「品種を決めつけすぎないこと」**が、テイスティングの精度を上げる最大のコツです。
まとめ
テイスティングの手順を振り返ります。
- 見る: 事実だけを観察し、先入観を持たない。
- 香る: 【最重要】 口にする前に徹底的に。スワリングは慎重に、繊細な香りを飛ばさないようグラスの内側に広げるイメージで。
- 味わう: アフターフレーバーまで意識を向ける。
- 考える: 最後に全ての要素を統合して結論を出す。
ソムリエ試験やワインエキスパート試験のテイスティング試験でも、求められているのは「正解の銘柄を当てること」よりも、**「そのワインのコメント(外観・香り・味わい)が正しく選択できているか」**です。
ぜひ、次の一杯からは「探偵」になった気分で、グラスの中にある情報を紐解いてみてください。ワインが語りかけてくるストーリーが、より鮮明に聞こえてくるはずです。

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