ワインを選ぶとき、「赤」と「白」の違いを単に「ブドウの色の違い」だと思っていませんか?
もちろん、黒ブドウと白ブドウという原料の違いはあります。しかし、実は**「製造方法」にこそ、味や香りを決定づける最大の秘密**が隠されています。
さらに、近年人気が高まっている「ロゼワイン」や「オレンジワイン」も、実はこの製造方法の組み合わせによって生まれています。
この記事では、ワインの色と味を決める「製造工程の決定的な違い」を分かりやすく解説します。また、意外と知られていない**「赤ワインは常温で」という定説の落とし穴**についても触れていきます。
結論:最大の違いは「皮と種」を一緒に発酵させるかどうか
結論から言うと、赤ワインと白ワインの製造方法における最大の違いは、**「果汁と一緒に果皮(皮)や種子(種)を漬け込んで発酵させるかどうか」**です。
- 赤ワイン: 皮や種ごと発酵させる
- 白ワイン: 果汁のみを発酵させる
この工程の違いが、あの色の違いや、「渋み(タンニン)」の有無を生み出しています。
1. 赤ワインの作り方:「醸し(カモシ)」が命
赤ワイン用の黒ブドウは、潰したあと、果汁・果皮・種子をすべて一緒にタンクに入れて発酵させます。
- ポイント:醸し(マセレーション)発酵中に発生するアルコールと熱の力によって、黒ブドウの皮から「赤い色素(アントシアニン)」が、種からは「渋み成分(タンニン)」が果汁に溶け出します。これを「醸し」と呼びます。この工程があるからこそ、赤ワインは複雑で濃厚な味わいになります。
2. 白ワインの作り方:フレッシュさをキープ
一方、白ワイン用の白ブドウは、**発酵の前にまず「圧搾(プレス)」**を行います。
- ポイント:果汁のみ発酵皮や種を取り除き、透明な「果汁」だけを取り出してから発酵させます。皮や種からの渋みが移らないため、スッキリとした酸味や、ブドウ本来のフルーティーな香りが楽しめるワインに仕上がります。
「赤ワインは常温で」の誤解と、正しい温度管理
赤ワインを飲むとき「常温が一番美味しい」と聞いたことはありませんか?実はこれ、日本の住宅環境においては少し注意が必要な定説です。
「常温(シャンブレ)」とは?
ワイン用語で常温に戻すことを「シャンブレ(Chambrer)」と言いますが、これはもともとヨーロッパの石造りの家や地下室の室温を指しています。具体的な温度は14℃〜18℃程度です。
日本の「室温」は高すぎる
現代の日本の住宅、特に夏場や暖房の効いた冬場の室内は、20℃〜25℃以上になることが珍しくありません。この温度で赤ワインを飲むと、アルコール臭が際立ってしまったり、味がぼやけたりすることがあります。
そのため、日本では**「赤ワインでも少し冷やす」**のが正解です。冷蔵庫で軽く冷やして、14℃〜18℃くらいで楽しむと、本来の味わいが引き締まります。
3. 実は奥が深い!ロゼワインの4つの作り方
「赤と白を混ぜればロゼになるのでは?」と思われがちですが、実はその方法は非常に限定的です。ロゼワインには、主に以下の4つの製造方法があります。
① セニエ法(Saignée)
「血抜き」を意味するフランス語が語源です。赤ワインを作る工程の初期段階で、果皮から色がほどよく出たところで果汁の一部を抜き取り、それをロゼワインとして発酵させる方法です。
- 特徴: 色が濃く、タンニンやコクを感じるしっかりとした味わいになります。
② ダイレクトプレス法(直接圧搾法)
黒ブドウを白ワインのように、すぐにプレス(圧搾)して果汁を搾る方法です。果皮と接触している時間がごく短いため、うっすらと色が付きます。
- 特徴: 色は非常に淡い桜色で、白ワインに近いスッキリとしたフレッシュな味わいになります。
③ 混醸法(こんじょう)
黒ブドウと白ブドウを混ぜてから、一緒に発酵させる方法です。
この製法を語る上で欠かせない重要なキーワードが**「フィールドブレンド(Field Blend)」**です。
- フィールドブレンドとは?「フィールドブレンド」とは、**同じ畑に複数の異なる品種を植え(混植)、収穫もプレスも発酵もすべて一緒に行う(混醸)という昔ながらのスタイルを指します。オーストリア・ウィーンの伝統ワイン「ゲミシュターサッツ(Gemischter Satz)」**などがその代表格です。品種ごとに熟成のタイミングが違うものをあえて一緒にすることで、土地の個性(テロワール)がダイレクトに表現された、複雑味のあるワインに仕上がります。
④ ブレンド法(混合法)
完成した「赤ワイン」と「白ワイン」を混ぜ合わせる方法です。
「これが一番簡単そう」と思えますが、実はEUのワイン法では、原則としてこの方法でロゼワインを作ることは禁止されています。
- 例外(シャンパーニュ):唯一の例外として認められている有名な例が、フランスの**シャンパーニュ(ロゼ・シャンパン)**です。シャンパーニュ地方でのみ、赤ワインと白ワインをブレンドしてロゼを作ることが許されており、高品質なロゼ・シャンパンの多くがこの製法で作られています。
4. オレンジワインの作り方(白ブドウで赤を作る)
最近話題のオレンジワインは、一言で言えば**「白ブドウを使って、赤ワインの製法で作ったワイン」**です。
- 原料: 白ブドウ
- 製法: 皮や種を取り除かず、そのまま一緒に発酵させる(赤ワインの製法)
白ブドウの皮や種由来の成分が抽出されるため、色はオレンジ色(琥珀色)になり、白ワインにはない「渋み」や「コク」、独特のスパイス感が生まれます。
まとめ:製造方法を知ればワイン選びがもっと楽しくなる
| ワインの種類 | 原料 | 発酵方法 | 特徴 |
| 赤ワイン | 黒ブドウ | 皮・種ごと発酵 | 渋み・濃厚 |
| 白ワイン | 白ブドウ | 果汁のみ発酵 | 酸味・フレッシュ |
| ロゼワイン | 黒ブドウ主体 | セニエ、プレスなど | 製法により多様 |
| オレンジ | 白ブドウ | 皮・種ごと発酵 | コク・複雑味 |
ワインの違いは、ブドウの色だけでなく「皮と種をどう扱うか」というプロセスの違いでした。
特にロゼワインは、「セニエ」なら濃厚、「ダイレクトプレス」ならスッキリ、と製法によって味が大きく変わります。
次にロゼを選ぶときは、「どうやって作られたロゼかな?」「もしやフィールドブレンドかな?」とラベルや説明書きをチェックしてみると、新しい発見があるかもしれません。

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